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2009年6月30日

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さいきん行くようになったパンやさんでのこと。

その商店街のはずれにある小さなパンやさんは、駅前のおおきなパンやさんにくらべ、なんだか全体的に古ぼけていてどうにもあかぬけないパンやさんなのであります。
今ふうでもなく、かといって老舗ふうでもない。
このメニュー!とかこんなこだわり製法!といった特色もない。
そもそもとびきりおいしいわけでもない。
ほぼいつもレジにいるおばちゃんがあまりに無愛想。

なのだけれど、おいてあるパンの種類はとても多く、そのどれもがやさしい味がするのであります。値段もとても良心的。うまく説明できないけれど、なんというか、パンなのにおふくろの味、なのであります。

いつのまにかぼくがいくのは駅前のパンやさんではなく、そのおふくろパンやさんになりました。おばちゃんはいつもかぎりなく無言でぶすっとしながらただた だ僕にパンを売ってくれていました。通ううちになんとなくわかったのは、おばちゃんはおそらくほぼひとりで製造販売をきりもみされているということと、と てもまじめで不器用な人なのだろうということ。

コマーシャルに優れていることは人生においてとても大事、というのはよくわかる。でもやっぱりそれだけじゃない。

ある日も僕はいつものように少し暗い店内でおかずパンやおかしパンを選び、何度も言うけれどほんっとに必要最小限しか話さない、気むずかしそうなおばちゃ んのいるレジのテーブルにトレイを置き、おばちゃんはもくもくと計算し値段だけを僕に告げ、ぼくはちょうどでそれを払い、いつものようにぼくは「どう もー」といいながら店内を出ようとしたのです。

すると、ぼくが入口のガラスドアにさしかかったあたりで、そのぶすっとしたおばちゃんが無言でさささっと僕の方に寄ってきたのです。あまりにさささっとしていて、小さな店内なのに近くにくるまで気がつかなかったほどです。

おばちゃんは、おもむろに入口そばに陳列してあったパンをトングでつかみ、持っていたビニールにくるみ、「これもどうぞ」と僕に手渡してきたのです。

あまりに予想外の出来事に僕はからだがびくっとなりました。

「え、え?」

「……」

「あ、あの」

「……」

「…おまけでいただけるってことですか」

「……」
無言で2,3度うなづくおばちゃん。

「あ、どうも、ありがとうございます」

「……」

「じゃ、どうもー」

「……」

いったい何が起きたのかよくわからないまま、僕はお店を出ました。

にぶいぼくは、家につくころにようやくわかりました。

おばちゃんはぼくにサービスしてくれたのです。
とても不器用に、らんぼうに、こころをこめて。

もっとしっかりお礼を言いたかったのでありまして、また明日いくのであります。

すっかりおばちゃんのとりこなのであります。
やるな、おばちゃん。

投稿者 :ナカヤン |

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